SPECIAL - キャストコメント

『ラストエグザイル-銀翼のファム-』に出演される声優のみなさまからインタビュー形式で本作に関するコメントをいただきました。毎週更新予定ですのでご期待ください。なお、各記事は最新2回分のみ(通常2週間)の掲載となりますので、お見逃しにご注意ください。

リリアーナ役:沢城みゆきさんへのインタビュー公開日 2012/02/17

「LASTEXILE」をひと言で表すと?

沢城 ちょっと格好良く響くかもしれませんが「片翼」ですね。皆が皆、誰かの欠けている翼になろうとしている。オープニングの歌詞にある「君の翼になる 私が」の、「私が」にすごくドラマがあるなとも思っていて、たとえばジゼルはファムを笑顔にしたいという、小さいけれど彼女なりの"大義"をもってファムの片翼になろうとしている。ファムは国を背負うミリアの片翼になることを選んでいます。ミリアはリリアーナと並走していきたいけれど、リリアーナが連邦についたことで片翼になりきれない。そのリリアーナはこの先ルスキニアの大義に寄りそって行くのではないでしょうか。そうやって、一人の小さな想いが連なっていくと、結果的にみんながこの星のことを考えている、というところが素敵だなと感じています。

リリアーナは序盤と第10話以降で大きく立場が異なりますが沢城さんの中でキャラクターのとらえ方に変化はありましたか?

沢城 収録がスタートする前に千明監督から彼女に関するプロットについて聞いてはいました。演じている私の感覚でいうと、以前のリリアーナはミリアとトゥラン国民しか見えていなかった。でもアデス連邦に連れ去られたことで、今はルスキニアのことがすごく視界にあって、共に未来を見ている。当然、演じる際に芯にしていることが違ってきています。加えて、以前はファラフナーズ様が見ていた未来を現実のものにするのが彼女の"大義"だったんですけど、今はそれを越えてより良い世界を自ら想像して作らないといけない状況に立たされた。ルスキニアと共にこの世界の誰より理想の最前線に立っている、パイオニア的な存在になっていると思いますね。

物語に登場していない間のリリアーナの様子や心境の変化について監督とお話はされましたか?

沢城 最初に千明監督から「ルスキニアと共に惨状を見ることで、彼女が思っている大義が変わっているので、そこはしっかり補完してほしい」と言われました。それを境に、これまで描いていたビジョンと違うことをしていかないとこの星がダメになってしまうと分かって大きく変化すると・・・。けれど、脚本上では現状その部分は描かれていないんですね。結果だけが描写されている。だから私自身はどちらかというとミリアと同じで「どうしてしまったのお姉様?!」と思うことが多いんです。その中のどこかで彼女がどう思っていたかをある程度見せてあげられないかと取り組んではいるのですが……。リリーはあまりにも自分のことはおざなりにするので(苦笑)。非常に古風で、旦那さんの後ろを3歩下がってついて行くというようなタイプ。口にはしないけれど、行動で愛情や思いを示すのは演じるうえでもすごく難しいですね。

「3歩下がる」とありましたが、その先のルスキニアに対する思いは?

沢城 私の考えの中では、彼女の5%ぐらいは女性としての想いもあるだろうと。その部分が「3歩」ですね。その他の部分ではやはり国を担っている人間としてルスキニアの隣にいるので、むしろ一歩前に出ることがあるぐらいなんですけど。

ここまでを振り返って印象的だったシーンは?

沢城 ルスキニアのことでいえば、グランレースでの最初の出会いの場面が演出的にも非常に印象的でした。リリーが転んでしまったところに手を差し伸べてくれて、そのとき目に映ったあの顔がすごく印象的で。それがのちのち何に転じたのか――おそらく恋ではないかもしれませんが――現状を考えるとすごく運命的でステキなシーンだったと思います。あとはファラフナーズ様が側に来てくれたときに・・・すごく良い匂いがしたんです(笑)。安藤麻吹さんのお芝居も含め、とてもドキッとして彼女に惹かれていったのが強烈に印象的でしたね。その後のリリアーナの立ち居振る舞い方が、ファラフナーズを理想としているんだなと分かって、その話数以降大勢に向かって演説するようなシーンは安藤さんのお芝居を思い出しながらやってみているんです。あの何とも言えない、心中が慮れない感じを意識して演じてみているんですが、リリーと同じで背伸びしているようになってしまいますが(苦笑)ただ、ファラフナーズは他人に力を貸してほしいと言える人なんですけど、リリアーナは彼女を目指している割に自分を犠牲にしようと考えてしまう人。だから自分がどうなろうとミリアの幸せだけは絶対に譲らない、みたいに考えてしまう。ミリアの姉とはいえ、両親もいないので母親的な気持ちですよね。私もつい、収録中は姉というより母親的な気持ちになってしまって(笑)。

根本にはやはりミリアがいる、と。

沢城 結局、大義って万人に向けるよりも誰かひとりへ向けて真剣にやる方が、結果的に多くの人の心を打つんじゃないかなと。例えば、ルスキニアはまだ相当悪者に映っていますが、彼の中では信じるべき正義があり、おそらくそれを知っているのはリリアーナだけ。彼も感情を吐露しないし、最初から偏見を持ってみていると全然彼のことを分かってあげられないと思うんです。でも、知ってみようという姿勢でみていくと、実は理解できることがあるかもしれない。リリアーナは最初にそれを試みたわけで、・・・今はミリアとルスキニア二人が大きな存在として胸にあるのではないでしょうか。

ルスキニアも孤高の立場で、リリアーナとは理解し合える部分がありそうですね。

沢城 ファラフナーズというすごく大事な人をあんな形で失ってしまった傷が、彼と彼女を無意識に結びつけているような気がします。だからこそ和睦を反故にされて、すごく裏切られた感があったし、そこにちょっと私情も混ざっていた気がするんですよね。「あの場に一緒にいたじゃない?それなのにどうして」という感情を突きつけていた気がします。何より、この二人には、若い時から自分でジャッジして生きなくてはいけなかったという“孤独”でつながっているような気がするんです。肩を並べるとどこか哀愁が漂うんですよね・・・。そのルスキニアの孤独にリリアーナが最初に気づくのは当然かなという気はしましたね。

これからの二人がどう歩むのかがすごく気になります!

沢城 ミリア達がちゃんとリリアーナを見ているので、彼女の視線の先にいるルスキニアが考えていることにも触れられるような気がするんですよね。だから彼女たちに感情移入して「どうして?」の先を見守ってくれれば、きっとルスキニアがやっていることが単純な悪ではないと感じていただけると思っています。

キャストコメントのリレーも今回で最終回となりました。最後に沢城さんから千明監督にメッセージをお願いします。

沢城 「大義」「孤独」とかいろいろ言いましたが、現代の言葉に表すとリリーは「だめんず」なのではと思います(笑)。私が友達だったらな・・・。自分で選んだことだから悔いはないんでしょうけど、もうちょっと幸せな顔も見たかったな・・・!期待しています、監督!(笑)

ディアン役:ゆかなさんへのインタビュー公開日 2012/01/27

「LASTEXILE」をひと言で表すと?

ゆかな 私にとっては「グラキエス語」(注:実際のセリフはロシア語)ですね。
アフレコで、いままでこの世界での共通語(日本語)をしゃべったのはまだひと言なんです。
まさかこんなことになろうとは思いませんでした。

グラキエス語を話すディアンという役はどのように決まったのでしょうか?

ゆかな それは良くわかりませんが、前作でもお声がけいただいていたんです。その時はスケジュールの都合がつかず、サブタイトルだけ担当させていただきました。
今作でも同様にサブタイトルを収録に来たら、見学されていたグラキエス語監修の方から「これからロシア語がいっぱいありますが、よろしくお願いします」と言われたのが 最初でした。
その時に「何のこと?」と(笑)。そのようなことは聞いてなかったんです。 とはいえ、最初に少しだけ外国語でしゃべって雰囲気を作り、あとはその世界の言葉で――という形だろうと思っていたのですが……。まさか、こんなにずっとグラキエス語でしゃべり続ける日が来るとは(笑)。

ここまで徹底すると、ロシアの方が聞く機会があったら喜ぶでしょうね。

ゆかな ウィオラ役のジェーニャさんはアニメが好きでロシアから来られたそうです。私にもたまたまロシアに知り合いがいるので、やるからにはできるだけのことをしたいなと思っていました。その甲斐あってか(?)毎回グラキエス語部分の台本をできるだけ自分なりに咀嚼しつつ読んでいたら、 だんだん何を言っているのか分かるようになってきたんです。少しではありますが良く出てくる単語とか、文法もたぶんこれが主語だろうとか。気がつけばキリル文字もなんとなく読み書きできるようになりました。ルビを振ってもらっても、日本語にない発音が多いので、カタカナを極力使わずキリル文字の方を直接読むように心がけています。アクセントの有無で発声が変わる音などがあるのでなかなか難しいですけれど。

ジェーニャさんとのコミュニケーションは?

ゆかな 彼女は日本語が通じます。固有の文化や言語的な制約、背景などが難しい場合は私がサポートします。日本語特有のあいまい表現が叙情的で美しい場合、どのように訳すかは難しいですよね。アフレコのときも、監督の側の表現したいことと、彼女が置き換えた言葉とで、直訳したフレーズ自体は違っていなくても意図が違っている場合がありますし。
そういうことは言語の学習レベルというより慣習や文化的な背景に基づく違いであることが多いので。
たとえばファムが「グランレースを一緒にやろうよ」と言うところ。
はじめ訳では「開催する」となっていました。でもファムは主催者になるつもりではないし、みんなに働きかけるから「出場する」でもない。その時は現場で時間もなかったのでテロップ上はそのままで、「私が作る」と訳すのはどうかと提案させていただきました。大正解ではないけれど、長い協議で両者ともに迷宮に入られてしまっていたので。
外国語に対するとき、痛いとか眠いというような根源的な要求を伝えるという基本のハードルがありますが、その次には感情やニュアンス、生きてきたバックボーンの違いを理解し合うというようなハードルがあるんですよね。

ゆかなさんは今回、役者として第二のハードルにチャレンジされているわけですね。

ゆかな まず、ディアンを私がやる意味を考えました。綺麗な発音のみ欲しているのなら、ロシアの方にやっていただいた方が良いに決まっています。そうではなくて、私がやる意味や私に出来ること、最終的にはそちらを優先する、というのが自分の中での結論でした。
発音は大事だけど、あまり気にしすぎて表現がおろそかになるのは本末転倒。
だからジェーニャさんには「直前まではテクニカルなことをやるけど、マイクの前に立ったら芝居の流れ優先でやります」と宣言しています。正しい発音に気を取られ過ぎるより、気持ちの流れや感情を優先して発声するという意味です。ただ、どちらも出来るのが理想なので、直前までと取り直し時の発音チェックは誰よりもシビアにして下さいと話してあります。

ディアンの人物像を理解するのに時間はかかりましたか?

ゆかな ディアンは小隊長なので、平素業務上はそれほど感情を露わにしたり慌てることのない人物です。
そんななか12話では貴重な人となりがうかがえます。
監督からあずかっているキャラクター設定も、若くして隊長で、小さいころから優等生タイプというもの。
私も小さいころ、自分の感情より全体を優先することがありました。ディアンが小隊長として部下の命を背負って命を生かしたり、能力を活かす姿勢には共感できます。

この世界全体についてはどのようにご覧になりますか?

ゆかな いまのところで申しあげますと、領土争いや覇権争いという原始的な問題の渦中で、―群像劇に近いかたちではありますが―ファムたちがどう生きていくか、どう自分らしく進むかだと思います。
そして「エグザイル」という絶対的な力とどう対抗し折り合いをつけていくか。
でも、どんな大きな雪だるまも、核になるのは小さなもの。覇権争いにしても元は誰かの思惑が核になっているのか。エグザイルといえど起動するのはあくまで人間の意志だったりするので、大きさと本質の対比といった問題もつきまとうんじゃないかな、と思います。

次回のインタビューはリリアーナ役の沢城みゆきさんです。メッセージをお願いします。

ゆかな 今のところディアンは、リリアーナがエグザイルを起動したことをわかっていて「あの女」と一方的に恨んでいますね…。
沢城さんとは学生の時に出会ったのですが……。艶やかな姫さまを演じられるお年ごろになられて、嬉しいやら誇らしいやら頼もしいやら…。
リリアーナも大変だけど頑張ってね!